霧の稜線を歩く。
半径10メートルの黄土色の高原と幕を張る白い空間以外はなにも見えない。 しかしあまり気にならない。 山が見えなくてもよかった。 歩いているということだけで十分だった。 風の音、呼吸の音、心臓の音がよく聞こえる。 鼓動が耳の横で鳴っていた。 雨と汗が滴る髪が冷たく、水滴が心臓の近くに落ちた。 目が自然と動きを捕まえ濡れた箇所で止まったとき、心まで見えた気がした。 ひとりで歩いているということに、ひどく孤独を覚えた。 身体は重たく、気持ちは沈んでいった。 霧に追われるように、歩いた。 不安が大きく膨らみ、歩みを速めた。 濡れた衣服が冷たく、体温が徐々に奪われ、脚にだんだん力が入りにくくなった。 山にいられることは私にとっては幸せだ。 だが楽しいことばかりではなく不安や恐怖のほうが大きく、心が押しつぶされそうになるときもある。 今日はそんな日だった。 疲労が最悪の絵を描いていった。 早く目的地に着いて眠りたかった。 なにも考えたくなかった。 ひとりでいることを選択したから孤独なのではなくて、孤独が私に付き纏うからいつもひとりなのではないかと怖くなった。 眩しい朝日で目が覚めた。 霧は晴れ、ずっと先のサザンアルプスが見えた。 風が汗ばんだ体をなぞっていった。 自然の創造物はそこにただ佇んでいた。 誰がなにを感じようと、誰がどこで死のうと、山は気にも留めない。 気が遠くなるような時の流れを山は見てきた。 山そのものが孤独の体現なのではないのだろうか。 ひとりでいることを選択したから孤独なのではなくて、孤独が私を選び、私は山を選んだ。 だからひとりなのだと。 山のように。 なぜ、山に登るのだろうと常々疑問だった。 今回の山行でなにかがわかった気がする。 それは山の孤独さと、私の孤独さが共鳴しているからかもしれない。 山にひとりでいるとき孤独に蝕まれる痛みは、生の核心に存在する感情なのだ。 山が心に宿っているのだ。
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たかくらさんが帰ってきた。5か月間歩き続けて、南島を放浪のち、パーマーストンノースに北上。わたしのうちで冬の装備などバックパック一つ分預かっていたのでそれのピックアップも。
新年に会ったときよりもキャラが濃くなっていて、一生笑ってられた。どうでもいい話もするし、真剣な話もする。24時間四日間一緒に過ごしたけど、とってもいい時間だった。 たかくらさんの未来はまだまだ希望と夢いっぱいで、少し羨ましくなった。いま彼にはしがらみがなにもないように見える。しばらくずっと会社員をしていて解放されたのだからそうあってあたりまえか。 トレイルや山で同じ信念を持った同志にいっぱい会ってきて、いつも感じる「友達でもないけど、それ以上に自分が大事にしている感性を共有している仲間」といった情をなんと言葉にしていいかわからなかった。たかくらさんは「僕らは運命共同体」と自然に言った。ストンと腑に落ちた。運命共同体だって。英語で言うと"We are in the same boat.” 彼はまた南下する。運命共同体だけど、当たり前に歩む人生は違う。出会いがあれば別れもある。だけど目指すゴールは同じだから運命共同体。 別れは寂しいし、孤独を突き付けられる。何事も諸行無常。わたしの好きな言葉の一つ。 「時宗の一遍上人の言葉を贈ります。『生ぜしも独りなり死するも独りなり。されば人とともに住するも独りなり。そひはつべき人なきゆえなり。』 人間はそもそも孤独な生き物でそれぞれ独立している。 でも一人では生きていけない。 ここがツラオモろいところで、これを知ると少し強くなれる。」 強さかぁ、と思いながらわたしは今日もストーカーと闘いバイトをしながら就活を進める。【現実ドーン!】 Day hike to Routeburn Track Glenorchy side to Harris Saddle and back the same way (27km, 6hours) Started walking through the bush. The white and green trees, the moss hanging on the branches, the leaves swaying in the wind, feeling the breath of them. My hands and feet were painfully cold, and yet the sun seems to take some time to show itself behind the tall mountains. The river splashes on rocks and the artistic concave surface visualises the time of history. The indifference fall represents the beast of winter although the water molecules flow like flying individual stars in Milky Way. The colours are so intense that it is so unnatural.
It is impressive that the trail was made winder than any tracks as if a motorway. The gigantic huts should be rather called hotels even with a few stars. Snow starts appearing at about halfway point to Harris Saddle. The density of the trees gradually decreases and the bird calls become less. Rifleman are showing hopping dances in front of us, Tomtit is cheeky as usual and good at making us irresistible to smile, Paradise Shelducks couple is taking a chatty walk by the river and some other birds are secretly watching us behind the trees. The treeline suddenly ends once the rocky walkway begins. The elevation freezes the melted snow to warn us that they are completely in the winter mode up here. The surrounding sharp, icy mountains look down on us under the even more vast sky. They have been there for a long time, just watching the slowest changes of Earth and maybe devastating events too, and repeating the seasons after seasons. The southern sky is coloured in grey like a concrete ground. The misty, cold cloud approaches as a pack of fears that can swallow lives by its single blow. They invade the blue northern side. The lake tries being as harmless as possible because it knows waiting is all to the moody cloud to pass. The snow deepens which narrows the blood vessels in my body. The fingernails turn purple and the white breaths disappear in the air quick. Is this a beauty or a cruelty of the nature? I am humbled. I am Japanese but I don’t know where I’m from. I have many homes across the world but I don’t know where I belong to. No one can give a straight answer to this simple yet hard question, even myself, ever, maybe forever. But I found this place surrounded by mountains with a simple minimal life, where saves and relieves me. はい、また行ってきました。タラルア山脈。 前回のタラルアピークスループ以来です。山脈なんで広いですが、行ったところは同じところ。どんだけ好きやねんってはなしですよね。
これがマッセー大学アルパインクラブ、いわゆる山岳部、今学期最後の山旅となります。わたしは今学期で卒業なのでこれにてみんなとはお別れです。 まあまあいつも通りですよ、今回も楽しくハッピーエンドってわけではなかったので、最後まで読んでってくださいな。 朝八時半出発のはずがドライバーの寝坊にて遅れる。 一時間少し運転して、オタキフォークスから登山開始。駐車場に隣町の年配系登山会のシャトルが停まってたので、山小屋の寝床争いになりそうな予感。山小屋は基本速いもん勝ちなので、ここは若さ大切です。 一つ目の山小屋はフィールドハット。1930年代に建てられた珍しい二階建ての、タラルアで二番目に古い山小屋。ここに来るのはもう3回目。 昼食を取り、次の山小屋、カイムハットにゴー。 天気予報は稜線で風速約60キロ。うーん、とりあえず行けるところまで行こうかということに。女の子のひとりが喘息症状が出て、かなり歩みが遅れる。チームリーダーのアビー部長はその子と歩くから、わたしはほかのメンバーを引っ張っていくことに。風が強くなる恐れがあるためわたしは一刻も早く山小屋に到着したかったのですが、みんな写真好きなのね、ずっとパシャパシャやってました。 無事にカイムハットに到着。視界不良にてマウントヘクター登頂は翌朝に持ち越し。 山小屋にはすでに10名の登山客がいて、わたしたち10人と合わせてキャパマックスの20名ちょうどに。寝床略奪紛争は幸いにも起きずに済みました。 この日はアビー部長の誕生日だったので、わたしが担いてきたホールケーキでお祝い。重かったぜ。 翌朝まだ真っ暗なときにアビー部長に起こされ、「ヘクター行くよ(コソッ)」。半分寝てる状態で準備を始める。するとなぜか全員が起きて準備してる笑 暴風のなか立ち向かいました。 寒かった〜…けど、無事登頂。朝日は濃霧で拝めず。 山小屋に戻ると隣町の登山会のおじちゃんたちが「おぉ、帰ってきたか!どうやった?」と聞くので「太陽が西から上がってきました。見に行かないと損です!」と答えておきました。ガハハハハ。 下山は簡単。てってってっと走ればすぐそこ。 なんてわけにも行かず。 女の子が膝を痛めてしまい、わたしがザックを担ぐことに。この無言の緊張感、痛いよね、辛いよね、わかるけどわたしにはどうしようもないというストレス。こういうの何回目だっけなぁ…。なんか慣れてきた気がします。 駐車場に到着すると、涙をポロポロ落としながらごめんねと謝るんです。よく頑張ったね。 という週末でした。 帰ってから大学の課題に取っ掛かり、朝五時に就寝。七時に起きて学校へ。午後四時デッドラインぎりぎりに課題提出できました。ふぅ〜。ヒヤヒヤしたぜ! そういえば、ガードルストーンに一緒に行ったライアンが滑落して肋骨二本折ったそうです。しばらくクライミング友だちがいなくて寂しくなりますって、それよりもまじで死ななくて良かったです。息子も産まれてまだ一ヶ月なのに。ほんとにもう。 天気予報がイマイチなので今回の山岳部の部活は日帰りに。
今年、ほとんどの活動リードしてる、 えらい。えらい。 朝6時半出発。 メンバーはフランス人の修士課程の学生、獣医学生、アメリカ人交換留学生、陸軍の兵隊、そしてわたし。 めちゃくちゃバラエティに長けるなぁ。 登山は楽しかったです。 稜線出てからはたぶん時速80キロぐらいの突風にさらされ、雨粒がまるで銃弾のように飛んできて、体はふわっと何度か浮きました。 これはだめだー! ピーク手前で撤退。 体感温度は-5度。手脚が痛かった。 帰りの途中で、洞窟に道草しにいきました。めっちゃ綺麗。暗くなるとここ光るんですよ。 ニュージーランドで有名な「グローワーム」です。 訳すと「光るイモムシ」。 一気に気持ち悪くなったでしょう。 天気予報は雨。でも友達がちょっくらカナダに帰る前にウェリントンからわしに会いに来てくれた。だから山に行こう、と。
チグハグなメンバーでの登山。私という23歳の日本人女子と、ウェスという年齢不詳カナダ人のドレッドヘアのヒッピー系(フリーター)男子と、トレバーというイギリス人の71歳の化学の大学教授の三人でニュージーランドの超ローカル山を行く。NHKの番組になりそうな感じ。 わたしたち三人に共通していることは、山が好きということだけ。 雨と知っていながら山に行く。 なんてかっこいいんだ。 今回、わし、新しいことに挑戦。 一泊二日の山小屋泊登山を16Ⅼのデイパックで行く! 行けた! 入った! サッと収納、パッと身動き、フワッと軽い、理想の登山スタイルですよね。 究極に究極を極めたウルトラライトにはまだまだ遠いですが、日々精進してきたいと思います。 帰りの日は川を渡り(あめちゃくちゃ寒かったです)、向かい側にある歴史的な山小屋(Syers Hut?)の見物に行きました。 ハンターたちが大昔に手作りしたらしいです。 見終えたあと、またあの凍える川を渡りました。雨だったので増水して、お尻まで浸かりました。足はなんか冷たいを越して痛かった…。 来週末は三度目のマウントタラナキ。ついに登頂なるか? 予定ではルアヒニ山脈のソートゥース(ノコギリ歯)のサーキットに3泊4日で行くはずが、最終日の天気が荒れそうな予感で、急遽タラルア山脈のかなり険しい稜線を永遠と歩くタラルア・ピークス・ループに2泊3日で行くことに。
しかし、相方が準備を怠り、食料は2日目で底をつく。 必要なものは持ってきてないくせにやたらとデカいザックに何が入っているかというと、前回と前々回と前前々回の登山で着ていた服。洗ってないし臭いし重いし、わたし久しぶりにぶちギレ。加えてやつは「トレーニングだから」と大学の教科書を持ってきている。もしもに備えての二人用テントも。 どうりで歩みが遅いわけだ。 消耗も激しいアップダウンが永遠と続き、日も短くなってきた秋の山はすぐに暗くなり、予定していた山小屋まで辿りつけず。 やつはわたしの食料を消費し、腹が減ったと不機嫌になる。プライドが邪魔をし、他の登山客に食糧危機の手助けを頼むこともできない。結局、わたしが山小屋で一緒になった他の登山客に食べ物を分けてもらい、わたしの食料をやつに与えてやるしかなかった。 もう愚痴大会でしかないのだが、ここまできたら全部書かしてもらう。 こういった食糧危機は今回が初めてではない。カワカワでのクライミングのときも、前回のタラナキ登頂のときも、やつは十分な食料を持ってきておらずわたしたちに餌付けしてもらっていた。 仏の顔も三度まで、と何度今回心の中で叫んだことか。 考えれば考えるほど腹が立ち、やつの顔も見たくないから先にさっさと進んだ。最後の山小屋に着いたとき、時刻午後四時半、あと一時間で日暮れだ。やつは半時間遅れて到着。しかし「あと12キロ、約四時間プッシュして駐車場まで帰る」とか言い出す。そりゃあほかのハイカーが晩御飯食ってるところを腹ペコで寝なきゃいけないのはつらいだろうけど、わたしは暗い中歩きたくないから拒否した。 最後は向こうが根負けしたが、ふて寝して飯も食わないとか言い出す。腹が減ってなくても飯があれば食うやつだから、なんかほざいてやがると無視して夕飯を寝床のとなりに置いといてやった。その晩もわたしは他のハイカーに頼んでご飯を分けてもらった。 次の朝、小屋を去り歩き始めるとやつはわたしにテントを持ってくれないかと尋ねた。テントは二人のためだから持つことにしたけど、このあとが問題だった。やつはわたしにあの辞書二つ分ぐらいする巨大な教科書を持てと渡してきた。悪いジョークかと思ったよ。けど違った。 こいつと別れてやる。本気で思った。顔も見たくないし、存在も感じたくない、声も聞きたくない。 山道でまた一からパッキング。先に行ってくれとやつに命令した。そしたら「なんで?なにか問題でもあるの?」って。問題はおまえだろー! やってらんないから先に行かせてもらった。走ってやった。一人で歩きたかった。頭がどうにかなりそうだった。 駐車場に到着し、わたしは安堵と空腹でヨレヨレだった。とりあえず飯が食いたいのに、やつは「近場の岩場でクライミングができるらしいから、下見にいきたい」って車を走らせる。まじで刺してやろうと思った。 麓の町にようやく降りてきて、サブウェイのサンドイッチを奢ってもらった。ここからがいちばん腹がたつこと、なんとわたし、やつを許してしまった。お腹がいっぱいになったら許してしまったのだ。信じられない。 この惨劇を忘れないようにここに宣言する。 もし同じことが起きたら、わたしはやつとの付き合いを解消する。わたしは何度もやつに忠告した。同じ間違いはもう起きないはずだが、もしそうなれば別れるという強い意志を持って相手に告げる。 以上! 追記 山はめちゃくちゃ良かったです。天気にも恵まれ最高でした。 大学の前期の真ん中の休み(イースターホリデー2週間)がついにやってくる!
タラナキが冬になる最後のチャンス。 しかし木曜にドカ雪の予報。 金曜の風と凍結標高がめちゃくちゃ怪しい。 というわけで土曜の午後にハイクイン決定。 しかし、1時間半遅れてやってくるやつらがいた。 森林限界超えて、直に襲ってくる暴風、、、日はもう落ちてしまった。 サイムハットまで悲劇のような登山だった。 結局、装備も経験も不十分な三人を強制下山させた。 残った三人で視界数メートル強烈な風の中のナイトハイク。ハットについたらハードシェルが凍ってた… 日曜はめちゃくちゃ天気に恵まれ最高のハイクになりました。 二年間のトライ、三度目の正直。 登頂。 タラナキありがとう!!!!!! またまたまたまたワイオペフに行ってきました(四度目)。
大学の山岳部で急遽プランを練ってくれと頼まれ一番行き慣れているところ、ワイオペフを選びました。 12人の部員を連れて21キロのサーキット。 みんなたくましい脚乗りで登ってくれました! いうこともよく聞いてくれて、文句も垂れず、前回の「地獄のワイオペフ」の汚名返上! ただ、12人もいたのでスタスタ行ってしまった先頭グループが途中でほんとうに消えてしまって、いろいろ最悪の事考えたりしてすごく不安になってめちゃくちゃ走ったのはしんどかった~ 追いついたときの安堵… からの、後方集団に追いつくために大逆走…… あー、疲れた!! いつかアウトドアガイドになりたいし、こういうのもいい経験のはず。 金曜の夜に出発、タウポまで車で二時間半北上。近くの無料のキャンプ場で寝て、土日はロッククライミングに勤しみました!
キンロック(Kinloch)という極小の町からクライミングができるカワカワ湾(Kawakawa Bay)まで約10キロ湖畔のマウンテンバイクのトレイルを歩きます。 わたしは約一年ぶりの外岩で緊張気味。一緒に行った友だちがいろいろテキトーなので余計に不安が募る… お互いクライミングのパートナーとしては初めてなので、良くないと思ったことは一個ずつ指摘し合ってコミュニケーションを取るようにしました。 とりあえず、前に登れなかったレベルが登れるようになってたことは進歩でしたが、前にリードで登れたのがトップロープでクリーンに登れなかったのはショックでした。 マルチピッチを本格的に練習できたのは今回の一番の収穫! 夕食後にナイトクライムをやろうって言ってたけど、思ったよりもクタクタで寝袋にくるまって本を読んだり、大学の宿題をやったり…笑 本業は学生なもんで… 日曜日は案の定寝坊。マルチピッチ一本登って帰りの支度。 帰りの車の中は睡魔との戦い!運転してくれてる友だちが眠くならないようにがんばったのが一番疲れた! |